2013/05/30

No.88 キャンペーンのおしらせ


アヴァンギャルズのユニフォームを作ってくださったイウジンさんのキャンペーンに参加中です!

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2013/05/24

No.87 リベンジ突撃取材!YASUHIRO主将 vs 敏腕女性記者



――早いものね。あのインタビューから、もう2か月もたったなんて 



マスコミを取り巻く複雑な人間模様の中、情報の源流を辿り、いろんな男と寝て、死に物狂いで勝ち取った、YASUHIRO主将への独占インタビュー。

この記事が誌面を飾れば、記録的な発行部数は間違いなかったわ。

だから、この社運の掛かったイベントに、あたしは、半年の準備期間をかけて臨んだの。

この仕事がひと段落したら、休暇をとって、海外旅行にでも行って……
 

それだけを励みにしてた。



でも、あたしは失敗した。


気づいたときは病院のベッドの上だったわ。

病院に運ばれたとき、あたしは朦朧(もうろう)としながら、ずっと「エクスタシー…エクスタシー…」って、うわごとを繰り返してたんですって。

そんな状態が三日三晩続いたんですって。


あたしにとっては、失敗であり、失態でもあったわ。

あのとき行方不明になったボイスレコーダーは、どこにあるのかしら。


---☆☆☆


退院したのぶ子は、頃合いを見計らって、顔見知りの記者をホテルに呼んだ。

そして、得意の肉弾接待で、とある極秘情報を入手した。


【練習試合】
・銀河系アヴァンギャルズ vs MOTOWN
・5月26日(日)午前10時~
・外濠公園野球場(JR四谷駅近く)



アヴァンギャルズの試合予定は、パニックを避けるために、幾重にも張り巡らされたセキュリティ環境の中、自衛隊の軍事機密と同水準で保護されている。


――こうなったら、会社を通さず、直撃取材よ。
 

スカートのホックをかけながらそう決心したのぶ子は、昨夜抱かれた男が起きる前に、そそくさと部屋を出た。
 

---☆☆☆


四谷のグラウンドに着くと、銀アの面々が試合前のアップをしていた。


まずはキャッチボールをしているアベ選手に、のぶ子はさっそく取材を敢行した。




 
「近頃、日本経済の復活のため、アベさんが、キャッチャーにコンバートするという噂が上っています」

確かにぼくが捕手をして、安倍政権が保守として政治を動かすことが、本当の意味でのアベのミックス(アベノミクス)であることは間違いないよね

 

もはや、このアベ選手の発言だけで株価が動く。やはり銀アのまわりにはスクープが、いや、金が落ちている。

のぶ子は取材のついでに、アベ選手からサインをもらった。
 

小文字の筆記体でabeと書かれたサインが、アニエスベーの企業ロゴのモチーフになったといわれている。

 


やがて遠目に、あのYASUHIROが見えた。





彼は、アップを終えると、ひとりグラウンドの石ころを拾ったり、相手ベンチの前に落ちている吸い殻を拾いはじめた。


それがひと段落したと思いきや、今度はグラウンドの外に出て、空き缶やごみを拾っている。
 

なぜスター自ら、そんな裏方作業をしているのか、のぶ子には疑問だった。
 

――あなたのまわりには、ごみじゃなくて、金が落ちてるのよ。

面と向かって、そう言ってやりたかった。


 

意を決して、のぶ子はYASUHIROの近くに駆け寄った。

「スターなのに、進んでごみを拾うなんて」

YASUHIROが振り向くと、のぶ子と目が合った。





 

その視線のレーザービームに思わず胸騒ぎがしたのぶ子は、一瞬目をそらし呼吸を整えた。
 

YASUHIROは穏やかな笑みをたたえながら、こう言った。

「僕がスターなのは、ごみを拾っているからだよ」

「?」
 

相変わらず、難しいことを言う人だ。

 

「いや、別にごみを拾わなくても、YASUHIRO選手はスターですよ」
 

「そうじゃないんだ」
 

「なにか深い理由があるんですか?」


きみ、そんなこと――。



  


――言えないよ。


のぶ子はとっさに両拳を握りしめ、その場に倒れないように歯を食いしばった。

2か月前のインタビューでは、ここから混乱がはじまっている。


同じ失敗はしない。

 
YASUHIROの口から繰り出される、「エキゾチック」とか、「野蛮な太陽」とか、それら単語のひとつひとつにのぶ子はよろめきながらも、質問を重ねた。

そして最後にYASUHIROが「よろしく哀愁」と言って、決死の突撃取材は終わった


なんとか失神することなく耐え抜いた。ポケットの中のボイスレコーダーも無事だ。

きょうは日曜だけど、これから会社に行って、一気に記事を仕上げたい。この業界はスピードが命よ。

これで2か月前の失敗を取り返せる。

のぶ子がその場を去ろうとしたそのとき、


――スターなのは、ごみを拾っているからだよ


ふと、のぶ子の中で、あの台詞が気になった。

それ以上、気にしなければよかったのかもしれない。



――スターなのは、ごみを拾っているからだよ
 


のぶ子の頭の中で、YASUHIROの声が反響しはじめた。


――ごみを拾っているからだよ

――ごみを拾って――


のぶ子の視界がぐるぐる回りはじめた。

「やめて」
 
両耳を手でふさいだが、もう遅い。

ごみを拾う ごみ拾う ごみひろう

ごみ拾う ごみ拾う ごみひろう

YASUHIROの声が、のぶ子の中で繰り返し反響する。
 
「やめてったら!」

交錯するレーザービームのような声が、ある一点に収束しながら、ボリュームを上げていく。

ごみひろう ごみひろう ごみひろう

「ほんとに、やめて!」

地鳴りのような耳鳴りに包まれながら

――え。

のぶ子は気づいてしまう

――ちょっと待って。

すべてが罠だったことに

――これって。

ごみひろう ごみひろう ごみひろう


――ごみひろう、やすひろ。
 


その瞬間、あの顔がフラッシュバックて、こう言った


 
――ひろみ、やすひろ。





全てがつながった瞬間、のぶ子はまたしても膝から崩れ落ちた。









2013/05/19

No.86 銀アの新境地!エレクトロ草野球

経済産業省が、日本のポップカルチャー全般を海外展開するため「クール・ジャパン戦略」を推進している昨今、日本の伝統文化である「草野球」も、事実、銀アのPVによって世界配信されていることはご存じだろうか。






本PVでは、去る5月12日に行われた公式戦『関東草野球リーグ』のWヘッダーの映像に、フランスのエレクトロデュオ「Daft Punk」のBGMと、KJ監督が適当に集めた無料のVJ素材、なぜかアニメ「戦国乙女」、そしてフジテレビ月9がミックスされ、もはや誰にも止められない混沌とした作品となってしまった。


BGM:Daft Punk 『Harder, Better, Faster, Stronger』
※クリアな画質を忠実に再現するため高画質でYouTubeにアップロードしております。モバイル端末(スマホ等)での閲覧は、画質が粗くなりますのでご容赦下さい
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TOKYOの津軽弁草野球チーム「銀河系アヴァンギャルズ」(英語表記:Galaxy Avantgardes 漢語表記:前衛的左右非対称髪型集団)は、想・考・酒の3拍子が揃った津軽弁草野球チーム。
結成は2011年3月。現在は選手約20名、マネージャー3名で構成されており、ストロングカップ2012春 関東地区2部ベスト8進出。関東草野球リーグ2012 日曜6部ベスト8進出。
主な出没地域は二子玉川、天王洲、渋谷道玄坂、五反田、溝の口ドンキホーテ周辺。






2013/05/03

No.85 KJ監督と少年の対話 その4




おっちゃんは、千本ポルノによるテクノブレイクで息絶えていた。


卒業の日を終えた僕は、あの世にいるおっちゃんと、テレパシーで会話した。

 



「おっちゃん、僕はあしたから、銀河系アヴァンギャルズという草野球チームに入団します」



――そのチームで、楽しく草野球ができそうか?


「それなりに、いろいろと工夫してるチームのようにみえます。そんなに強いチームじゃないけど」



――強いとか、勝つことばかりが楽しいわけじゃなかろう。工夫とか努力とか苦労の先に、楽しさがあるのじゃ。その過程を楽しめばいい。勝敗はあくまで結果じゃ。


「僕もそう思います。たとえば3-4で負ける試合と、10-0で勝つ試合とじゃ、3-4で負ける試合のほうが楽しいような気がします。もちろん悔しさはあるでしょうけど」



――それでよい。


「おっちゃんは、ぼくをプロ野球選手にしたかったみたいだけど、結局、草野球どまりで、ごめんなさい」



――草野球の何がいけないんじゃ。草、という言葉が、安っぽいだけじゃ。言葉のイメージだけで、思い込みをするのはいかん。立派な団体競技じゃ。現に世界大会もある。


「ぼくには難しい話だね。ぼんやりとしかわからないよ」



――ボーイ。それでよい。いまの世の中、具体的なものばかり求められ、抽象的、漠然としたものが軽んじられている感がある。大事なのはバランスなのじゃ。


「なんとなくわかったよ!」



――ボーイ、それでよい。細かいことにこだわるなよ。



 

そしてテレパシーが途絶えた。


涙を拭いた少年の目の前に、草野球という名の、果てしないフロンティアが広がっていた。



<<完>>