おっちゃんは、千本ポルノによるテクノブレイクで息絶えていた。
卒業の日を終えた僕は、あの世にいるおっちゃんと、テレパシーで会話した。
「おっちゃん、僕はあしたから、銀河系アヴァンギャルズという草野球チームに入団します」
――そのチームで、楽しく草野球ができそうか?
「それなりに、いろいろと工夫してるチームのようにみえます。そんなに強いチームじゃないけど」
――強いとか、勝つことばかりが楽しいわけじゃなかろう。工夫とか努力とか苦労の先に、楽しさがあるのじゃ。その過程を楽しめばいい。勝敗はあくまで結果じゃ。
「僕もそう思います。たとえば3-4で負ける試合と、10-0で勝つ試合とじゃ、3-4で負ける試合のほうが楽しいような気がします。もちろん悔しさはあるでしょうけど」
――それでよい。
「おっちゃんは、ぼくをプロ野球選手にしたかったみたいだけど、結局、草野球どまりで、ごめんなさい」
――草野球の何がいけないんじゃ。草、という言葉が、安っぽいだけじゃ。言葉のイメージだけで、思い込みをするのはいかん。立派な団体競技じゃ。現に世界大会もある。
「ぼくには難しい話だね。ぼんやりとしかわからないよ」
――ボーイ。それでよい。いまの世の中、具体的なものばかり求められ、抽象的、漠然としたものが軽んじられている感がある。大事なのはバランスなのじゃ。
「なんとなくわかったよ!」
――ボーイ、それでよい。細かいことにこだわるなよ。
そしてテレパシーが途絶えた。
涙を拭いた少年の目の前に、草野球という名の、果てしないフロンティアが広がっていた。
<<完>>
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