銀河系ニュース
津軽発、TOKYOの草野球チーム「銀河系アヴァンギャルズ」の裏サイト
2013/03/26
No.76 引き締めにかかる銀ア
先週、驚異的なペースで短編小説3作をリリースし、野球チームとしての原型を完全に見失った銀河系アヴァンギャルズが、3月24日(日)、東京タワーのお膝下である芝公園野球場にて練習試合を行った。
結果は1-12という大差での敗退。あまりの情けない結果に、試合後に緊急ミーティングを決行した銀アは、明け方まで続いた白熱した議論の末に、
「気を引き締める前に、財布を引き締めましょう」という結論に達した。
銀アは4月中旬から、ドーム球場出場権を賭けた約半年間のペナントレースに突入する。
その他写真はこちら
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2013/03/22
No.75 YOSUKEのファッションチェック
乾いた金属バットの音が鳴った。
同時に、俺に向かって飛んできた大飛球は、澄んだ青空の引力に吸い込まれるように滑らかな軌道を描く。
ブラスバンドの演奏を背に、白球を追いかける。
めいっぱい伸ばしたグラブに打球が納まると、たちまち俺は大歓声に包まれた。
「ナイスキャーッチ!」
「いいぞようすけー!」
背中で一身に浴びる歓声の中、かすかに、
「ようすけがんばれ」
あの子の声が聞こえたような、気がした。
-----☆★☆
部屋のリビングにぽつんと置かれた写真立て。
最後の夏、県予選で負けた後、球場の前で撮った集合写真。
あの時の悔しさも、辛かった練習も、主将として悩んだ日々も、
泣きはらした顔で精一杯つくった笑顔と一緒に、写真の中に閉じ込めてある。
テレビはくだらない深夜番組を垂れ流していた。
色とりどりのバナー広告を映すパソコンのモニターを眺めながら、眠い目をこする。
こだわりの検索条件で、何度も何度も絞り込んで、
物欲の渦に、深く深く飲み込まれて、
俺はだんだんと、夜の魔法にかけられる。
モニターの中に、2つの商品だけが残った。
ミズノプロとアンダーアーマー
硬派な自分と、ミーハーな自分との間で、
俺は少しだけ楽天を憎んだ。
究極の選択だった。
充血する目の奥に、対照的な2つのブランドの商品が映る。
考え込んでいるうちに、時計の針は深夜2時を指していた。
そして俺はアンダーアーマーに決めた。
「この内容で注文する」のアイコンをクリックしようとしたその時、
――高校球児ならミズノプロだろ
えっ
――おまえも変わったな
これは幻聴か
突然、ブラスバンドが奏でる不協和音と、シンバルが割れる音と、試合終了のサイレンの音が交錯して、耳鳴りのように俺を襲った。
あの頃俺を包んでくれた大歓声が、たちまち罵声と怒号に変わった。
耳鳴りはだんだん大きくなって、部屋の壁に反射した罵声が何度も俺を突き刺した。
やめろ、やめてくれ
俺は耳をふさいで、頭を抱えながらその場にうずくまった。
――この軟派野郎
う
――ちゃらちゃら野球やってんじゃねーよ
う、う
――しょせんお前にとって、野球はファッションか
「うるせえっ!」
俺は罵声を振り払うようにアイコンをクリックし、注文を確定させた。
その瞬間、耳鳴りは止んだ。
――俺だって変わったんだ。
バーチャルでリアルな取引が完結し、しんと静まり返った部屋の真ん中で、俺はぽつんと膝を抱えて座った。
明後日あたり届くかな。不在票が入るだろうな。再配達してもらうのはいつがいいかな。
どうでもいい思いを巡らせながら、自分をごまかした。
しばらくすると、涙がとまらなくなった。
過去を捨てたような気がした。
青春に泥を塗ったような気がした。
座布団を抱えながら、声をつまらせて、むせび泣いた。
みんな、ごめん
あのとき、俺に歓声をくれたみんな、ごめん
そう心の中で何度もつぶやきながら、座布団にうずめた顔を上げようとしたその瞬間、
「ようすけがんばれ」
背中越しにあの子の声が、聞こえた。
はっとして振り返った視線の先に、あの集合写真があった。
しばらく写真から目を離せないでいると、どこからかみんなの声が聞こえた。
――しっかりしろよ主将!
――かっこいいじゃねえか、そのアンダーアーマー!
――アヴァンギャルズ応援してるぞ!
俺は涙を拭いた。
そして写真の中の、泣きはらした顔で精一杯つくったみんなの笑顔に、同じように泣きはらした顔で微笑み返しながら、
「俺、あん時のままだから」
そう言って、パソコンの電源を落とし、布団に入った。
さあ、今週末は試合だ。
2013/03/19
No.74 2013年度 気になる賞レースの行方は
般若の面を被った大柄な男が、賭博場へ討ち入った。
「――お滝はどこだ」
けたたましく響く丁半の声が止み、薄暗い賭博場にたむろする薄汚い浪人や悪徳商人が、突然の来訪者を睨み付けた。
賭博場の奥に親玉であるのぶ兵衛が鎮座している。
のぶ兵衛は般若の面の男に向けて、あの小娘のことか、と鼻で笑うように言った。
「かまわん。連れてこい」
のぶ兵衛が下人に指示すると、手鎖につながれたままのお滝が、その変わり果てた姿を現した。
「お滝っ」
般若の面の向こうで、唇が怒りに震えた。
のぶ兵衛は持っていた赤い盃(さかずき)に手酌で酒を注ぎ、それを一気に飲み干すと、板の間に勢いよく盃を投げ捨てた。
「わしは武力での解決は好まん。この小娘を返して欲しければ、わしの質問に答えてみろ」
般若の面の男はやむなく、抜いていた刀をおとなしく鞘(さや)に収めた。
のぶ兵衛は、突然現れた来訪者の、その聞き分けの良い態度に不気味さを感じ、群衆に向けて目配せをした。
――始末しておいたほうがよかろう。
先程まで博打に盛り上がっていた群衆の眼に、殺気が走る。
じめじめとした賭博場のむせ返るような臭気の中、のぶ兵衛の口が重く開いた。
「では1問目」
群衆はごくりと息を呑み、そして固唾(かたず)を呑んだ。
「開幕から5試合のオープン戦を消化した銀河系アヴァンギャルズだが、いま現在――」
突然、のぶ兵衛の目がくわっと見開いた。
「最多安打と打点王の2冠は、誰!?」
その瞬間、群衆が一斉に般若の面の男に襲い掛かった。
あぶないっ!
お滝が叫んだ時、どこからともなく赤い光が瞬き、群衆は皆その場に倒れた。
――孝之丞(たかのじょう)、参上。
「助太刀致す」
「かたじけない」
倒れた群衆は皆ぴくりとも動かない。孝之丞の一閃に息絶えたようだ。
のぶ兵衛は思わず舌打ちをした。
――ここで打撃2冠(安打数6、打点9)の孝之丞が助太刀とは、分が悪い。
般若の面の男と孝之丞は、鋭い剣先をのぶ兵衛に向けながら、正眼の構えのままじりじりと詰め寄った。
板の間に賽子(さいころ)が散乱している。
のぶ兵衛は足元の賽子を拾い、孝之丞に向けて投げつけた。
孝之丞はとっさに刀を振り下ろし、賽子を斬った。スローモーションのように粉々に割れる賽子の中から、小さな鉛(なまり)が落ちた。
刹那、のぶ兵衛はお滝の襟首を引っ掴み、その喉元に短刀を据えた。
「それ以上近づいてみろ。この小娘がどうなるかわかっているのか」
――卑怯な
その時、どこからかシュルルルという音が聞こえた。飛んできた白いお手玉はのぶ兵衛の右手をはじき、床に短刀が落ちた。
お滝はのぶ兵衛の腕を振り払い、辛うじてその場から逃げた。
「おのれ、なにやつ」
――たゆまぬ肉体鍛錬と
「だれじゃ、どこにおる」
――いつかは絶対ネオヒルズ
「なにっ」
――そう、我こそが東京砂漠に咲く、一輪の薔薇
「まさか、六本木の光一!?」
ここまで8イニングを投げて防御率1.75――
――万事休すか。
のぶ兵衛は天を仰いだ。
板の間に転がる鉛を見て、孝之丞は吐き捨てるように言った。
「貴様等、いかさま賭博か」
「悪いか」
「か弱い町娘をもて遊び、生き延びるために女を盾にし、あげくの果てにはいかさま賭博。この悪行三昧、見逃しておけぬ」
孝之丞がそう言った後、隣にいた般若の面の男が突然、扇子を持ってゆったりと舞を踊り始めた。
――こたびの敵は河川敷にあり。相手にとって不足は無し――
どこからともなく三味線の音が鳴った。
――この世はまさしく下剋上、夢幻(ゆめまぼろし)の合戦絵巻――
三味線の音が近づく。近づくほど、音色が激しくなる。
――敵が繰り出す白鞠(しろまり)目掛け、一太刀、二太刀、三の太刀――
ベンベンベベンベンベンベンベベン
――燃ゆる芝生で大立ち回り――
ベンベンベンベベンベンベンベンベンベベンベンベンベンベンベベンベン ベンベンベンベベンベンベンベンベンベベンベンベンベンベンベベンベン
――死して屍(しかばね)拾う者無し。
男がくるりと回り、鮮やかに般若の面を脱ぎ捨てた瞬間、三味線の音が止んだ。
男の素顔を見たのぶ兵衛は 、首位打者(.800)と本塁打王の――
もうひとりの2冠王がいたことを思い出した。
「り、りょうえ――」
のぶ兵衛が名前を呼び終える前に、亮右衛門のスイングが標的を捉えた。
2013/03/18
No.73 銀河系ニュースリニューアル記念、YASUHIRO主将の独占インタビュー
――目の前に、あの銀河系アヴァンギャルズのYASUHIROがいる
女性記者のぶ子は、昨晩緊張のあまり寝付けなかった。
落ちついて、大丈夫。
この日にむけて、半年前から準備してきた。だから大丈夫。
マスコミは汚い世界よ。
いろんな男と寝たわ。
だって上司の命令だったんですもの。
社運が掛かってるって言われたんですもの。
涙なんて流してられなかったわ。
死にもの狂いだったの。そしてやっと半年前に、うちの会社が独占インタビュー権を勝ち獲ったのよ。
感無量だわ。目の前にあのYASUHIROがいる。
いけない。感傷に浸ってる暇はないわ。確保できたインタビュー時間は3分。あと2分40杪しかない。
落ちついて、大丈夫。
のぶ子は1つめの質問を、ゆっくりと、そして確実に読み上げた。
「今シーズン、既に4試合登板していますが、投手としての手応えを教えてください」
――毎試合勉強、毎試合反省、そして毎試合バックを守ってくれるみんなに感謝さ。まだまだ制球が課題だね。テンポのいい投球を心掛けてるよ。
スタープレイヤーほど謙虚であるという。
のぶ子は、テーブルの上に置いたACレコーダーに目を向け、録音中のランプがついていることを確認し、2つめの質問に移った。
「マウンドでは、どんな心境ですか?」
――人生には3つの坂がある。そう、「上り坂」「下り坂」「まさか」ってね。僕が投げる試合は「まさか」の連続さ。だから気分はいつも絶体絶命だよ。
――何て独特な表現なんだ。
のぶ子は、目の前にいる怪物からいったん目を逸らした。
いったん落ち着いたかにみえた緊張の高ぶりは、もはや止めようがなかった。
大丈夫。相手も同じ人間よ。そう言い聞かせ、次の質問を読み上げる。
「あの天文学的な防御率の数値についてお伺いしたいのですが」
きみ、そんなこと――
「えっ」
――言えないよ。
好きだなんて。
郷ひろみの狂おしい名曲が頭をよぎり、一瞬、目の前に銀河が広がった。
蒼白になる顔、汗ばむ背中、遠のいていく意識。
失神しかけた自分に、もう一人の自分が喝を入れた。
――もう負けるのか?
――この半年間、いや、もっと前から苦しかったんだろ?
――社運が掛かってるんだぞ?
――いろんな男と寝たんだろ?
――仕事のために、女捨てたんだろ!?
のぶ子は自分を取り戻した。あらかじめセットしてあるタイマーの表示を見る。
残り30秒。
もはや迷いは無かった。死んでもこのインタビューをやり遂げる。その一心で、最後の質問に移った。
「それでは最後の質問です。YASUHIRO主将にとって、草野球とは何ですか?」
――夢を追いかけるファンタジーであり、生きているというリアリティであり、そして何より――
「何より?」
――エクスタシーだね。
のぶ子は膝から崩れ落ちた。
その瞬間、すべての緊張を解き放つように、タイマーが鳴った。
2013/03/11
No.72 ISSEI 引退セレモニー
―― 春はサヨナラの季節。
2週連続のリリースとなった銀河系アヴァンギャルズの
最新プロモーションビデオ
に、この4月から北海道へ転勤が決まったISSEI選手の引退セレモニーが収録されている。
3月は出会いと別れの季節。去る3月3日の試合で初のサヨナラ勝ちを収めるも、翌週3月10日の試合で初のサヨナラ負けを喫した銀河系アヴァンギャルズ。
その中心メンバーとして長きにわたり銀アを支え続けたISSEI選手が、黄砂が吹き荒れる世紀末さながらの景色となった二子玉川河川敷を舞台に、約1年9ヵ月間の選手生活にいったんサヨナラを告げた。
ISSEI選手は今後、人が足りない試合のたびに容赦なく東京に呼び出される予定だが、旭川から羽田空港までを自腹で費用負担するかわりに、羽田空港から球場最寄り駅までの電車賃を銀アに請求できる。
また、この試合から外国人選手枠としてエドワード(フランス)が初出場を果たした。銀アはこれからも、グローバルに草野球の楽しさを伝えていく。
出演:銀河系アヴァンギャルズ
楽曲:TAK MATSUMOTO featuring ZARD
動画撮影:KUNIKO
プロデューサー:KJ
※クリアな画質を忠実に再現するため、前作から高画質でYouTubeにアップロードしております。モバイル端末(スマホ等)での閲覧は、画質が粗くなりますのでご容赦下さい
2013/03/07
No.71 今季第3作目の動画をリリース
想・考・酒の3拍子揃った劇空間草野球チーム「銀河系アヴァンギャルズ」が、今季第3弾目の
プロモーション映像
を発表。前作のハードボイルド路線から一転、今作では本業である試合映像をメインに、シンプルかつコミカルな作品に仕上げた。今季から加入した新キャラ、フランス人のエドワードによるアグレッシブなカメラワークが冴えわたる。
出演:銀河系アヴァンギャルズ
楽曲:MAX
動画撮影:エドワード(仏)
プロデューサー:KJ
※クリアな画質を忠実に再現するため、前作から高画質でYouTubeにアップロードしております。モバイル端末(スマホ等)での閲覧は、画質が粗くなりますのでご留意下さい
2013/03/06
No.70 銀アの立佞武多、出陣
昨夜、結成以来初のサヨナラ勝ちを決めた草野球チーム「銀河系アヴァンギャルズ」。その熱戦の余韻冷めやらぬ中、銀アは今週末10日(日)、二子玉川グラウンドにてマグマダイバーズ(狛江市)と対戦する。その武者絵のような顔立ちと体格から、『アヴァンギャルズの立佞武多(たちねぷた)』と称されるRYO選手に意気込みを聞いた
記者「RYO選手、先日の八潮北球場での左中間本塁打(推定飛距離100m)はお見事でした」
――それがし、奥津軽深く潜む武士(もののふ)。名を亮右衛門(りょうえもん)と申す。野球という名の戦(いくさ)に於いて、悪党外道をこらしめる――
記者「対戦相手に悪党外道は失礼じゃないですか?」
――こたびの敵は河川敷にあり。相手にとって不足は無し。この世はまさしく下剋上、夢幻(ゆめまぼろし)の合戦絵巻。敵が繰り出す白鞠(しろまり)目掛け、一太刀、二太刀、三の太刀。燃ゆる芝生で大立ち回り。どうせ一度の儚(はかな)き命、さすれば浮世に悔いは無し――
記者「草野球ですので、もっと気楽にいきましょう」
――思い起こせばこの半生、恵まれ過ぎた人の縁。身に余りあるそなたの助言。今宵は宴(うたげ)じゃ、盃(さかずき)をもて!!所詮は散りゆくこの身体。酒と泪(なみだ)になりにけり。漢(おとこ)らしく粋(いき)に果てよう。これぞまさしく益荒男(ますらお)の意気――
亮右衛門はそう言うなり、腰に下げた太刀を勢いよく抜き、宵闇(よいやみ)を数回、斬った。
――合戦前の素振りに、一段と力が入る――
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